タイトルロゴ 「未来 挾土秀平の夢『歓待の西洋室』」
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装飾用画像(東家土蔵 壁)

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文:挾土秀平

   森

前回に続き、100年前の洋館を移築する計画の夢に向け、1,000坪の自然林を、とうとう手に入れる事が出来た。そんな自然を目の前にして生まれてきた思いは・・移築する洋館を主とするのではなく、この自然林を称えるような建築をしよう、であった。さっそく並び立つ樹林の中を調べてみると、両手で抱えるようなナラの木が、競って上へ上へと伸び全体を覆っている。その間を縫って、今では珍しいヤマズミ、ミズメサクラ、ヤマナシ、ナツハゼ、ヤマボウシ、ホオバ、ウルシらが、豊かに自生している。その上で、この素晴らしい環境を、極力壊さない場所に洋館の位置を決め、そのアプローチになる部分の木々の伐採に取り掛かった。

しかし、その伐採も簡単な訳にはいかない。ねじれ曲がった木のどの部分に切り口を入れ、周りの木々を傷つけないように、狙った位置に倒さなければとなると、途端に難しくなってしまう。いざ木を倒してみると、幹や枝葉が山のようなボリュームとなり、木の大きさは下から見上げていた時とは想像もつかないほど大きなものだったと実感してしまう。そうして二十から三十本の木を切り倒し、同じ場所で焼き続けた。

すると焼け跡には、真っ白な灰がたまっていった。その灰は、焼いた木の量とは逆に「あれほど焼いたのに、これだけしかないのか」と思うくらいにわずかな量に驚く。茶道の世界では、家が火事になったら、何よりも先に灰を持って逃げるくらい大事なものだと聞いたことがある。その灰の中でも、落葉樹の灰を番茶で煮て、枯れ葉色にした灰が特に貴重だという。その時、ふと思いついた。左官の壁に聚楽(じゅらく)という壁がある。土と砂と藁と糊で作った和風の繊細な壁を、土の代わりにこの灰を使ってみたらどうだろう。洋館の中で、モダンな塗り壁にできないだろうか。そうすればこの森に生えていた木々が、この土地で永遠に生き続けることになる。

パチパチと音をたてて、切り倒した木が燃えるたき火を見つめながら、いつも考えにふけっていた。生命力あふれる木々を切り倒したという罪悪感も、そう考えることで不思議と昇華されていった。木々を最後まで燃やし尽くすと、いつのまにか夏から初冬へと季節が移り変わっていた。夕暮れには木々の真横から光が差し込み、森全体の樹皮が透かされるように照らされる美しい一瞬がある。木々を切った影響で、太陽の光が森の奥深くにまで届いていた。この光はきっと大木に代わり、低木や山野草を育て、豊かな森づくりを手助けしてくれるに違いない。

■「歓待の西洋室 03」へつづく■

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