タイトルロゴ 「未来 挾土秀平の夢『歓待の西洋室』」
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装飾用画像(東家土蔵 壁)

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文:挾土秀平

御岳山を望む高山市丹生川町の自然林で進めている、夢の洋館プロジェクト。そのアプローチとなる部分の伐採が終わり、やがて一年が過ぎようとしている。その間というもの、自然と格闘しているかのような作業の連続であったが、同時に、ありのままの自然や、なにげなく咲く山野草の美しさを実感していく日々でもあった。その内に、この洋館の建築が、こうした草花に囲まれながら進んだなら、どんなに素敵なことだろう・・・とそんな思いが芽生え始めて、洋館建築だけが周囲の森の環境を破壊しながら突出して進むのではなく、洋館をとりまく森ごと手入れをした、風景として同時進行させていきたい・・・。そんな思いで、雪解けと同時に、飛騨地方に自生する草花を根付かせよう・・・。そうして、山野草を見つけては移築する洋館の森に移植する日々が続いた。

アズマイチゲにキクザキイチゲ、シュンランやササユリなど、洋館の森の周辺に自生する山野草は、西洋の花のような派手さはないが、えもいわれぬ素朴でかれんな姿に、たちまち心を奪われてしまう。しっかりと根付くようにと祈りながら、その植生に合う土の配合や腐葉土の量、水の引き加減や光の当たり具合を考えて、黙々と植え続けていた。

ある時、はたと気が付いた。普段、自分は左官として、土や水を混ぜ合わせて壁を塗る時、風や光や水を感じながら、配合の塩梅(あんばい)を考えることを毎日の仕事としている。私にとって山野草を植える行為は、そのまま「左官」の仕事とまったく同じ感覚であった。山野草の移植、そして左官、この二つに共通する事は[水を感じる]というにほかならない。現代の建築では、風や光、温度などで変幻自在に形を変える水を厄介者として、どう使わないようにするかで成り立ってきたように思う。だから薄っぺらで、味気ない建築になる・・・とあらためて、この森の中で実感している自分。

水を使うものづくりは、出来上がりの不具合も多いけれど、うまくできた時は、生命的で、感動的な一回限りの素晴らしいものができる。そう考えると、同じ水を使う農業も料理もまた「左官」だと思え、その可能性や枠組みをどこまでも大きく広げる事が出来る・・・水は命の源。地球は水の星。私の愛する山野草と森が、今、左官の意味というものを、そっと私に教えてくれた気がしている。

■「歓待の西洋室 04」へつづく■

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