タイトルロゴ 「未来 挾土秀平の夢『歓待の西洋室』」
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装飾用画像(東家土蔵 壁)

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文:挾土秀平

   解体前の洋館の佇まい

夢を語ろう。

もう夢を見ることさえ出来なくなってしまったかのような、時代に対する失望感が漂う今。利便性や時間短縮ばかりが優先される、薄っぺらさに嫌気がさしていた矢先、私はある洋館を手に入れた。この洋館は、大正4年、飛騨高山に暮らしていた陸軍中将の迎賓館として建てられたもの。

いぶし銀の瓦屋根に英国風の暖炉の煙突が突き出た土蔵風の外観で、和風と洋風が入り混じった不思議な雰囲気をかもし出している。調べてみると、当時の職人が伝統の技で、最高のハイカラに挑んだ重厚で気品に満ちたものだった。それから100年。老朽化し廃墟となっていたものを譲り受けたのである。まるで宝石の原石を手に入れた様な気分に浸りながら、私は今、1つの夢を見ている。この洋館を当時と変らぬ技能で、現代の良さ(感覚)とを融合させた未来的な復元を、自分の手で創造することが出来ないかと・・・現実の厳しさとはうらはらに、そんな風に思いをめぐらせ始めると、イメージがとめどなく広がり始める。洋館を移築するのは、ナラやクヌギといった落葉樹の巨木が自生するなだらかな斜面がいい。風がざわめき差し込む木漏れ日が揺らめく様な・・・そんなゆっくりとした時間が流れる場所に、この新しい洋館が凛として、たたずんでいたならどんなに素敵な事だろう。ところが、いざ自然林を探してみると自分達の身の周りにある山々から、ありのままの自然が、これほどまでに失われていたのかと愕然とする。日が差し込む余地も無く植え込まれた植林、伐採された裸の山、こんな山奥にまで田畑が切り開かれ広がっている驚き。そうして2年が過ぎた頃、やっと目指していた自然林に巡り会うことが出来た。そこは両腕で抱えるような樹林が、ゆったりとしていて、植生豊かな低木が花や実をつけて広がっている。そんな自然の造形美や、心休まるおおらかさの中でしばし浸っていると、自分達人間が作るものなんて、なんともたかが知れてるな、と実感してしまう。その内に、これまでの自分が、あの洋館を宝石として、その宝石をきわだたせようと自然を探してきた。・・・が、改めてこの樹林の中に立ち、はっと気付いた。逆であったと。この手付かずのまま、ゆうに100年かけて作られた樹林こそが宝石だと思えて来たのである。これまで私達は建築する事で自然を壊し傷つけて来た。今度はこの洋館を、自然を引き立てる為の脇役にする事が出来たなら、きっと素晴らしい風景になるに違いない。そんな夢が私の心の中に芽生え、実現に向けて今、動き始めている。

■「歓待の西洋室 02」へつづく■

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