灰雲が、かすかな雨を落として去ってゆく
廃墟の灯台が影のように立ち
絶え間ない風が吹き抜け、
空が鳴いている
北緯 48.53
エメラルドの海原を見下ろして
この身体を倒し、
連れ去ってしまうような風の岬に
こうして東の果ての人間がいることの不思議を思う。
キャップフレエル、西果ての風の中
息を吐く口の隙間を縫う風が
この肺を、鋭くえぐり取らんとねじりこみ
巨石の島を打つ海流が、
身をさしだせと、白波の手を伸ばして
エメラルドのうねりが
この両膝の力を交互に抜いて、歩ませる。
キャップフレエル、西果ての風の中
身体ごと
前のめりになって吐き出す息
いま、この息こそが、生きてきた答え。
岩が風を砕き
風が波を生み
波が岩を侵す
岩壁に弾け散るしぶきの死体が
・・・・泡と消えて
西果ての風が、強く吹くたびに
伝う涙がこめかみを走り
風は一点も漏らさず、この身体を渦巻いて
私は、自分自身を全身で知る。