せり出した岩根に横たわり
夜の影に眠る

風の中に身体を逃がし
臭いを散らし
冷たい雨に濡れながら
隠れている者を捕えて食らう


ひかりが、恐ろしく哀しく
やせた身体のひかりの傷

人になれることも
近寄ることもなく

空にも吠えぬ獣

風の裏に後ずさりして
朦朧と手と足を舐めている

群れずさまよった
仲間の気配にさえ怯えて

獣はそのまま年老いた。

・・・・・・・・・

今、老いた獣はみつめている

せり出した岩に姿を現し
     風に背毛を流し

          灯りを見つめている

はじめて空を背にして立った獣。