フクジュソウ

飛騨の冬はきびしく長い
11月中旬の初雪から野山は眠り
4ケ月間の氷点下の世界は
春待つ心を待ちわびて
残雪の3月の三寒四温は
苛立たしくもどかしい時間となる

飛騨にはそんな3月の
冬でもなく春でもない
冬と春の間の季節がある

フクジュソウが愛しいのは
凍った残雪を脇に花開き
春とは名ばかりの心を
繋いでくれるからだ

日暮れに閉じた花は
冬の星が軋む放射冷却を浴び
霜に凍てながら黄金の花を咲かせるのだ
黄金の花が
春の太陽に呼びかけてくれるのだ

お前は春の花というよりは
冬と春の間に咲く花
お前のおかげで
春待つもどかしさに耐えられるのだ

毎年お前に逢うことで春本番を待てるのだ
お前は白銀に咲く黄金の花
春を呼ぶ花フクジュソウ
俺はお前に救われているのかもしれないな

元気元気でまた来年。