アズマイチゲ
まだ霜柱が立つ
冬枯れの景色の中で
ポツンと咲く
わずか1ミリほどの
茎からすれば
アズマイチゲは大輪の花である
花にとって
無情な放射冷却に耐えながら
春というには
熱のない白い太陽に向いて咲き
日暮れには花を閉じる
最上級の透明感は
春の妖精の名を与えて
惜しみない
その弱々しくも凛と立つ姿
この頬も感じぬ微風に
震えて咲く姿は
切なさと哀しみの感情が生まれて
追い越してしまうほどの美しさ
光と肥沃な土が好きな
アズマイチゲ
お前が咲くと
この樹林の野草達が目覚めて動き出す
春告げる花
お前が大群生できないのは
あとひとつ
何かが足りないんだろうな
白磁の冷たい光と
カラカラ乾いた枯れ葉の間に
咲く真空の花
俺ははじまる春に感動しながら
お前に囲まれていたいと
願っている
凛と立つ妖精の花アズマイチゲ
おぉ、キレイキレイ。