キクザキイチゲ

キクザキイチゲは
いつもアヅマイチゲと
寄り添うように咲いている

アヅマイチゲが春の白い妖精なら
それと同じだけ繊細な美をもって
キクザキイチゲは春の青い修羅を思わせる

この2種が入り乱れて
咲く姿をつくるのは夢でもある

乾いた枯葉の世界を一変させる 
か弱き鮮烈な姿が
春到来を告げる

永遠である青へのあこがれ…
空の青、水の青、銀河の青
シルクロードを旅する青い宝石 
ラピスラズリのツタンカーメンの青
きっと宮沢賢治も
澄み切った青への憧れを
持っていたに違いない

キクザキイチゲは
澄んで透きとおった青い花で春を彩る
でも難しいんだよな…
お前の望む環境を
なかなか掴めないでいる俺

実はお前を春の修羅と呼ぶには訳がある
淡く透けるような花の中で
突然変異かと思うほど
濃い青花の一株がいるのだ
俺はその一輪を
修羅のキクザキイチゲと名付けている

それが去年一昨年は咲かなかったな…
今年は出逢えるだろうかと
その斜面の土を見つめている

春の修羅が居るはず、ここに居るはずなんだと。