待つことの喜び
こんもりとした自然林に築かれた石垣の道を進んでゆく・・・
この石垣に植え込んだ花は、
夕陽の中でつぼみを開く、
ゆうすげのゆり
晩餐の夜に咲きたての花で、待ち人を出迎えるのである
歓待の西洋室は、
この樹林のアプローチの先にある。
時間に追われ、人を押しのけ、
傷つき傷つけて費やしてしまった、たいせつな人生の時間
でも今は、
一本の樹の下に立ち、根元から目をはわせ、
枝先の一点を、
しばらく見つめて・・・空へとつなぎ
樹の幹に爪を立てては不思議に思い、
そして根のことを想う。
解ってきたのは、
いつか、いつか、
本当に人と人とが認め合い、集っている場所にいたいということ・・
受けいれるということ
待っているということ
また訪れる春のこの≪ 土 ≫に、ふたたびカタクリが咲き
ササユリが芽を伸ばしてくれる喜び
老木が立ち枯れて、ひとつの命を終えてゆき、
うす紫のカタクリは、光の風にゆれる花
ササユリは日影を香りに変える花
そんな人と人とが、
時をわかちあう空間として
歓待の西洋室はゆっくりと、つくられてゆく
この夢は、
完成することが目的ではない、
ひとつひとつの過程が美しく積み重ねられればいい
深い霧がたちこめた朝、
わずかな雲の切れ間から、太陽の光と風がそそがれると
樹林は木漏れ日を落としてゆれ、
鳥たちがいっせいに飛びたってゆく
ではまた逢いましょう、
と言って、私は≪歓待の西洋室≫から、手をふる。